刑事の勘は本当にあるのか

古波津優育






第1章 はじめに

第2章 直感のメカニズム

 ・直感研究の今

第3章 直感を信じることは自分を信じること

  ・「直感」ではなく「直観」

  ・直観を使ってどんな答えが得られるの?

  ・どういう人が直観による答えを導き出しやすいか

  ・直観の力

・第4章 刑事の勘

  ・「刑事の勘」は本当にあるのか

  ・「刑事の勘」の使いどころ

第5章 おわりに

 

第1章 はじめに

 

 ドラマや漫画、様々なシーンで刑事たちが言う。「これは刑事の勘だ」。

しかし私たちが知っている「刑事の勘」の多くはフィクションの世界の台詞だ。科学捜査がスタンダードとなった現代において、刑事が勘を頼りに犯人を特定しているなどと聞くとバカげていると思うかもしれない。筆者は、アニメや漫画の中で「刑事の勘」という台詞を聞いたとき、バカげていると思って鼻で笑っていたタイプだ。しかし、とは言え本当に刑事の勘が現実に役立てられているのかどうか、刑事の方たちに聞いてみたいと思っていた。

 また、「直感」とは何なのか、ずっと気になっていた。なぜ人間の思考には直感という不確定要素が含まれているのか。なぜ人類は進化の中で直感を獲得したのか。直観は謎に満ちている。

 心理学ジャーナリストの佐々木正悟さん、直感を用いたカウンセリングを行っている蒼井みずきさん、元刑事の吉川祐二さんの3人に行ったインタビューを基に直感の謎に迫り、また刑事の勘の現実性を検証する。なお本記事では勘と直感を同一のものとみなし、特に区別は設けない。

第2章 直感のメカニズム

 直感に関する著書があり、心理学ジャーナリストの佐々木正悟(ささきしょうご)さんに話を聞いた。

画像①佐々木正悟の講師プロフィール | カドセミ (studywalker.jp)より引用



 佐々木さんは、『脳は直感している』のほかに『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)や『イラスト図解 先送りせず「すぐやる人」になる100の方法』(KADOKAWA)『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック)など数々のビジネス書を執筆している。大学卒業後に海外に留学しアメリカの大学で心理学を学んだ。

 

 佐々木正悟さんの著書 『脳は直感している』(2007)によると、私たちは日常的に直感に頼ってものごとを判断している。佐々木さんによると、仮に人の判断を論理的判断と直感による判断の2種類に分けた場合、なんとその8割が直感による判断であるというのだ。佐々木さんの分類では、人間の判断方法の種類は以下のような種類がある。

 

①本能による判断・・・生物(という種)が生まれつき持っている生得的行動パターン

     先天的・原始的・肉体的

②直感による判断・・・個体ごとの経験や学習に左右される総合的判断

     後天的、現場主義

③論理的判断:理詰め

     

*直感による判断には本能による判断も含まれる

 

 この分類によると、本能による判断は生物が生まれ持つ原始的で肉体的な力である。人間のみならず、すべての生物が生得的に持っているとされる。一方で直感はその個体ごとの経験や学習に左右されうる力である。つまり、人間と他の動物を比較した場合、人間の方がより脳が発達し、学習に優れている生物であるため、直感による判断能力は高いといえるそうだ。また、同じ生物種であるヒト同士でも、その個体による差があるのが直感的判断能力だ。例えば、生まれたばかりの赤子と40歳を迎えた大人を比較してみると、圧倒的に経験を積んだ40歳の大人のほうが直感能力が高いと考えられる。佐々木さんによると、直感は後天的かつ経験や学習により獲得しているものであるため、経験が豊富であればあるほど高い能力を持っているといえるのだ。

 そして本能とも直感とも異なるのが論理的判断、いわゆる「理詰め」である。たとえばものごとを判断するときに「AであるからBだ。」のように、結論を出すための順序だてがあったり、結論に至るまでの明確な筋道を示せる場合は論理的判断といえる。

  佐々木さんのお話を聞いて私の日常を振り返ってみた。すると、確かに直感的判断を下すことが多い。たとえば、カフェに行こうと思ったとき、なぜ今カフェなのかあまり論理的に考えたりせずに行ったりする。もちろん「勉強がしたいから」「おいしいコーヒーが飲みたいから」などと明確な理由に基づいてカフェに行く人もいるだろう。しかしではなぜ「その」カフェを選んだのかを明確に答えられるだろうか。多くの人は「なんとなく」そのカフェを選んだのではないだろうか。「家から近いから」や「安いから」と答える人もいるだろうが、その場合、カフェに行こうと思い立った時にはすでにどのカフェにしようかというイメージが頭の中に浮かんでいる。つまり、カフェに行こうかなと思った時点で行く店舗も決定しているのであり、それは論理的な思考を介していない。これまでの経験をもとにして最適なカフェを直感的に選んでいるのである。このように考えた場合、論理的判断を行う機会は圧倒的に少ないことが実感できた。

 

直感研究の今

 ずばり直感のメカニズムはどうなっているのか。佐々木さんによると、直感を扱う大脳生理学において、そのメカニズムはまだ解明されていないそうだ。大脳生理学は、動物や人間の行動を司る大脳の機能を研究する学問である。人間では意識、感情、記憶、注意といったさまざまな精神機能も研究の対象となっている。大脳生理学分野では脳という器官で直感がどう扱われているかの研究をしているそうだ。しかし直感の研究は、それを解明することによるメリットや有用性が少ないと考えられていることから、現段階では進んでいないというのだ。

 

「結局、研究って人がするものなんで、 そういう分野に興味を持つ人間がどのぐらいいるかということなんです。そして、研究というのは、それを研究してみると、何かにいい成果が出せそうだと示す必要があって、そういう意味ではあまり成果が出そうな感じがしないかなってところかもしれないですね。」

 

 直感はまだ開けていない研究領域なのだ。しかし直感が未開であるということは、直感に秘められた可能性が大きいということになる。「刑事の勘」も馬鹿にできないのではないか。そこで次に、実際に直感を用いてきたという人に話を聞いた。

 

第3章 直感を信じることは自分を信じること

蒼井みずきさんは現在、直感を活用する手法を用いたカウンセリングを行っている。

画像②取材中の蒼井みずきさん(筆者撮影)

 

「直感」ではなく「直観」

 蒼井さんは「直感」ではなく「直観」という言葉を用いる。蒼井さんは、「あくまで自身のイメージ」と前置きしつつ、「直感」と「直観」の使い分けを以下のように説明する。

 「直感」はより五感から受ける感覚に近いが、「直観」は肉体的な感覚である五感や現実から受ける感覚より深い場所、つまりは自分の心から発生するものと捉えており、「肉体や現実的な事よりは、もう少し深いところからやってくるイメージ」と語った。

 なお、本記事では、蒼井さんの話の場合には「直観」を使い、その他の箇所では「直感」を使う。

 

 蒼井さんは、この「直観」を活用することで悩みや疑問、あるいは自分について聞いて答えを出すワークを実施している。しかし蒼井さんがワークを受けに来た人の答えを出すのではない。あくまでも答えを出すのはその人自身なのである。蒼井さんは答えを導くための「お手伝い」をしているにすぎないのだという。

 

直観を使ってどんな答えが得られるの?

 直観を用いて答えを出す手順はシンプルだ。カウンセリングを受けに来た人は、いきなり直観による答えを出そうとするのではなく、まずは何も考えないように誘導される。そこで重要なのは、自分の価値観や自分の枠組みを手放すことだ。そこで蒼井さんがポンっと質問を出す。そうすることで、心の深い部分からくる直観を導きやすい。思考を手放し、何も考えていない状態を作り出すことで、自分が持っている思考のバイアスや癖が取り除かれ、より純粋な感覚として悩みや疑問に対する直観的な答えが出せるのだ。

 しかし直観による答えは必ずしも言語によって出力されるわけではないという。例えば、「今の私に必要なこと教えてください」という問いを設定したとする。そうすると、その答えが明確に言葉で現れる場合がある一方で、色や身体的な感覚として抽象的に現れる場合もあるのだ。その場合は更にその抽象的な答えを言葉で表現できるように変換する作業を行う。

 

「直観による答えは、体の感覚として出る人もいるし、ビジョンが見えたりとか何か象徴的なものが見えたりする人もいます。見えたら、またそれを言葉に変えていくようにしていくんですね。」

 

どういう人が直観による答えを導き出しやすいか

 人によっても直観が導く答えの形は変わるという。では、一体どのような人が直観による答えを導きだしやすいのか。

蒼井さんによると、悩んでいたり何か強く答えを求めている人は直観による答えが導きやすいそうだ。

 

「今までのパターンで、別に何も変化もなく同じパターンで暮らしていこうっていう人はあまり直観の力は必要ないじゃない。答えを求めてる人、悩んでる人とか、あるいは例えば新しく会社を作りたいとか、経営者の人とかは、やっぱり直観による答えが出しやすい。」

 

 直観は、感覚が鋭い人や特別な能力を持っている人にのみ正しく機能するのかと考えられる場合もあるが、蒼井さんによるとそうではない。直観的能力は誰もが皆持っているという。また、蒼井さん自身も特別な能力を持った人間ではないそうだ。

 

「元々みんな来てる(直観で受け取っている)けど、それを言葉に還元できてないだけだと思います。私たちは普段から体で、五感でいろんなものを受け取ってる。後はそれをできるだけ純粋なかたちで感覚に頼って答えを出します。」

 

 私たちは周囲の人間や環境から絶えず五感によって刺激を受けている。しかし普段それを意識することはないため、自分が周囲から受け、培ってきた感覚が自分の奥深くに眠っていることに気づいていない。

 

「だからこそ、何も考えないで、直観に頼ってポンって出てくるものが結構、本当の答えだったりします。」

 

直観の力

 蒼井さんは直観を活用してカウンセリングを行うなかで、多くのいわゆる普通の人(特別な能力を持っていない人)が直観を使って答えを出せることに驚いたという。それは私たちが直観を使える力を持っていることを意味する。では、なぜ私たちは直観よりも思考を重視しているのか。

 蒼井さんは、私たちが生きる21世紀の社会は科学が発達し、あらゆることがロジカルに説明されると話した。従って目に見えない感覚や直観はエビデンスが不足しているとして軽視されがちである。しかしそうして作りあげられたのが現代の思考偏重社会ではないだろうかと蒼井さんは考えている。何か発言すればその根拠を求められ、論理的に説明できなければその意見は無視される。だから、「好きだ」という言葉でしか表せない感覚を無理やりこじつけた言葉で説明しなければ納得してもらえないような事態が生まれる。「なぜそれが好きなのか」と聞かれて「いやそれが好きだからです」と応じる以外にどう答えろと言うのか。しかしその答えにさえ明確な論理が求められるのが現代なのだ。蒼井さんは、そのような社会の中にあって、自分の直観を信じることが大切だという。

 

「今ってみんな考えすぎて(思考偏重)、あんまり自分の感覚を信じないです。例えば学校の教育なんか全部そうだし。だから、私はもっと勘を信じたらいいと思う。ほんとに自分のやりたいこととか、好きなこととか。 その好きとか嫌いという感覚をもっと大事にしたら、もっと生きやすくなるんじゃないかな。」

 

 私たちは時に、「こうあるべきだ」「こうしたほうが将来の自分のためになる」など合理的な思考に偏って自分が本当にやりたいことを見失う。しかしそれは本当は自分がしたいことではない。だから後悔する。

 

「自分を見つめ、知れば知るほど、人生は広がっていくんだろうね。それを教えてくれるのが直観だと思います。どうあるべきかじゃなくて、自分がどう生きるか。何が好きで何が嫌いかっていうのには、 直観はよく答えてくれます。」

 

 直観を信じ、自分の感覚を信じて生きることは自分を信じて生きることだと、蒼井さんは付け加えた。

第4章 刑事の勘

 次に、刑事たちは実際に「刑事の勘」を捜査に役立てることはあるのかを元刑事の吉川祐二(よしかわゆうじ)さんに聞いた。

 

画像③吉川祐二 | 株式会社ノースプロダクション (north-pro.com)より引用

 

 吉川さんは元警視庁刑事で薬物や少年犯罪を担当していた。現在は、防犯コンサルタント、探偵、コメンテーターとして幅広く活躍している。

 

「刑事の勘」は本当にあるのか

 

 元刑事は実際に現場で刑事の勘を使って捜査をしていたのか。刑事にとって勘とはどのような意味を持つのか。吉川さんは、刑事の勘が実際に働きうると考える。

 

「刑事の勘、要するに刑事が犯人や不審者を見つけるような時に出る勘が、いわゆる刑事の勘って呼ばれてるものであって、勘というのは実は人それぞれみんな持ってるんですよね、 仕事上において。たとえば営業の人には営業の勘っていうのもあると思います。刑事の勘もその一種だと思っています。」

 

 吉川さんは「刑事の勘」があるとしつつ、それは刑事だけに固有の能力ではないと考える。誰しもがその人の職種や専門、興味を持つ分野において一定の勘を働かせることができるというのだ。つまり勘とは経験の蓄積から生まれるものであるということだ。これは前述の佐々木さんが定義した直感と同様の考え方であると言える。

そのうえで、吉川さんは刑事の勘を「違和感のようなもの」と表現する。

 

「警察官がすれ違いざまに、不審者を見つけて職務質問をした結果、その人物が実際に事件の犯人だったとか、そういうことがありますよね。そのときに警察官が必ず言うのが、『職質対象が目を伏せた』とか、『顔を逸らした』などです。それはね、それ以上に言いようがないということなんですよ。 何がおかしかったかというのは、本当にわずかな何か、自分が見た物や人がちょっといつもと違うなという感覚。何かおかしいなという違和感のようなもの。これが、 一言で言うと刑事の勘っていう形になると思いますね。」

 

 しかしその違和感を言葉で説明することは難しいのだという。

 

「それを例えばじゃあ今何がふつうと違ったんですか、って質問されたとしても答えられない。本来であれば答えられるはずじゃないですか。 でも別に僕は隠してる意味じゃなくて、うーんって答えが出てこない。そういうもんなんです。」

 

 しかしそれは例えば目つきや眼球の動き、歩き方など、その人の一挙手一投足から細かな動きに至るまで、あらゆる身体的動作から「違い」を感じ取っているのかもしれないと吉川さんは考えている。例えば歩き方だ。一般的に人は前を見て歩く。一方でこれから泥棒に入ろうとしている人間は、 キョロキョロと視線を動かす。周囲に人がいないか確認するためだ。このように、人が犯罪に走るとき、一定の動作・挙動がある。刑事は刑事でない人に比べ、これらの不審な動作に対する認識力が高いのだ。故に刑事は犯罪に敏感になり、犯罪に対する勘が働くのだ。それは刑事の経験を通して犯罪のパターンや犯人の挙動をインプットしていく中で高めることができ、故に刑事に固有の能力となるのだという。

 

吉川さんは言う。

 

「防犯の始まりは、 人間観察だというのが僕の考えなんです。人を観察することによって不審な点を見つけ出す。そうすることによって、その人が次にどんな行動に出るかというのが自ずと分かってくるわけですね。この人はもしかしたらこれから敵になるかもしれない、自分を攻めてくるかもしれない、自分を騙しにかかるかもしれない、といったことがわかってきます。 自然と観察をしていることによってわかってくるんですね。」

 

刑事の勘の使いどころ

薬物犯罪や少年犯罪を担当してきた吉川さんには、実際に刑事の勘が働いたと感じた瞬間がいくつもあったという。

 

「例えば、僕ともう一人の元薬物捜査員が一緒に歩いていました。そのとき前から歩いてきた人と我々二人がすれ違った後に我々は同時に顔を見合わせたんですよ。その時に出る言葉っていうのが『だよな』 というわけです。」

 

 薬物捜査官の勘が「前から歩いてきた人」を薬物関係者だと判断したのだ。

しかし実際に警官が行う職務質問においては、職務質問を受ける人のほとんどが、吉川さんいわく「善意のある人」であり普通の一般的な人であることも忘れてはならないという。

 

「 テレビのドキュメントや密着などで職質を受けた人が犯罪者だったケースが取り上げられるために、職務質問を受けた人がみんな犯罪者だって思うかもしれない。でも現実としてはほとんどの人が善意の人。」

 

 吉川さんは他にも少年係として少年犯罪にも携わっていた。その時にも刑事の勘は働いた。現在の「トー横」。吉川さんが警官だった時代は「ヤングスポット」と呼ばれていた歌舞伎町のその地域で少年補導を行っていた。少年補導は、深夜徘徊や喫煙、飲酒はもちろんだが、その少年少女が何かの被害者になっていないかを調べることも重要だ。吉川さんは例えば児童福祉法の被害者になっていないかということを考えながら補導していたそうだ。

そんなある晩のこと、吉川さんは一人の少女を見つけ、違和感を抱いた。

 

「あれ、あの子、何かちょっと違和感があるなと思って声をかけたんです。 色々と話を聞いてくうちに、 実はいわゆる売春の組織に入っていたということがわかりました」

 

このような形で隠れていた事件を見つけ出し、捜査の端緒となるケースもあるのだ。

 

「今の子たちってすごくおしゃれで発展しているから、例えば16歳の女の子がハイヒール履いても普通に歩けるとは思うんですね。ただ、昔は15歳、16歳の子がハイヒールを履いたりすると、歩き方に違和感があるんですよ。普通に歩けないんですね。タッタッタって歩けないんですよ、慣れないから。それも違和感になったりする。」

 

吉川さんは人間観察の大切さを訴える。

 

「僕、人間観察って言葉をよく使うんですけど。 人間観察というのは、色々な意味でこれからの本当にこの社会を乗り越えていく上で絶対必要なことだと思います。人を観察するっていうのは、人を窺うっていうのかな、なんか嫌な感じがしますよね。でも自分の頭の中にインプットして、この人は変だな、この人はどうなんだろうなっていうことを見るのは、これからほんとにいろんな意味でいろんなことに繋がっていきますよ」

 

第5章 おわりに

 本稿では「刑事の勘」が本当に有効活用されているのかという疑問から直感(直観)の謎を解き明かそうと試みた。実際に直感についての著書を持つ佐々木正悟さんや直観を用いたカウンセリングを行っている蒼井みずきさん、元刑事で薬物捜査や少年犯罪を担当した吉川祐二さんの3名に話を聞いた。

 佐々木正悟さんは直感とは個体ごとの経験や学習に左右される総合的判断能力のことであるとした。佐々木さんによると、仮に人の判断を論理的判断と直感による判断の2種類に分けた場合、なんとその8割が直感による判断であるそうだ。「直感で選んだ」などと聞くと、まるで運任せで判断したように感じてしまいがちだが、実際には私たちは日常の様々な場面で直感を使って判断を下しているのだということが分かった。

 蒼井さんは「直観」とは自分の奥深くから受け取るものだとした。そして、思考偏重で論理的な判断が求められる現代だからこそ、自分の心の深いところから来る「直観」を信じることが大切だと言った。それは自分を信じることにつながるのだ。

 吉川さんは、直感とは経験の蓄積であり、刑事の勘とはそこからくる違和感であるとした。吉川さんが刑事だったころ、刑事の勘を頼りに捜査の端緒をつかんだケースがくつもあった。薬物捜査や犯罪の現場で、刑事たちは一般の人と薬物使用者、犯罪者の微妙な違いを違和感として敏感に察知する能力を持っている。それは経験の中で培われてきた感覚的な判断能力だという。

 

 直感とはまだまだ未開の分野であり、そのメカニズムは解明されていない。従って「直感とはなにか」という問いに対する答えを筆者がこの場で出すことはできない。しかし、あえて答えるならば、直感とは3人の答えを総合したものであると言えるだろう。つまり、直感とは経験や学習に基づき、自分の中から生まれてくるもので、私たち誰もがそれを感じ取ることができるのだ。

 

 カウンセラーの蒼井さんも元刑事の吉川さんも直感(直観)の重要性を説いた。

今後、脳科学が発展するにつれて勘や直感という機能の謎は解き明かされていくだろう。私たちが想像しているよりも大きなインパクトをもって直感が重視される時代が来るかもしれない。



参考文献等

 

佐々木正悟, 脳は直感している, 祥伝社新書, 2007,p.17. 

 

画像①:佐々木正悟の講師プロフィール カドセミ (studywalker.jp). カドセミ KAODKAWAセミナー. https://studywalker.jp/lecturer/detail/75/.(参照2024‐01-9)

 

画像③:NORTH PRODUCTION INC.,吉川祐二  株式会社ノースプロダクション (north-pro.com), https://www.north-pro.com/talents/%e5%90%89%e5%b7%9d%e7%a5%90%e4%ba%8c, (参照2024‐01-8)